気が遠くなるような年月をかけ、計算では成し得ない奇跡的な干渉などを受けて出来た岩石。
地球/大自然が作ったその欠片が石ころになり、人に拾われここにある。その石の魅力を引き出せるかどうかは腕次第。『同じものは無い』ってところに惹かれますね。

 さて、石の世界には色々なジャンルがあります。
周りには大理石や石垣、コンクリート/砕石に神社などにあるジャリや玉石からお墓に至るまで結構身近にあります。
川遊びでは水切りや石積み、遠投など足下の石がオモチャになりますね。
とても身近なものから、基本となる地学/科学分野に始まり、化石/生物学,隕石/天体学などと様々で、そんな石の中から当店では主に観賞石を扱います。
観賞石は足下の小石から全てのカテゴリに当てはまりますが、当店は自己採集がメインですので限られますね。


【 水 石 】

名のある銘石は数多くありますが、多くを求めず絞っていきたいと思います。
 まずは代表的なものが水石ですね。
水石の世界では、掛け軸と山水見立石に盆石。掛け軸に合わせて姿石を飾るなど立体化した美を堪能できます。また、祝い事などがあった場合、縁起の良い見立石をそっと置いておくなど粋な計らいに風情があります。基本的に割ったり削ったりは好まれません。自然のままタオルや素手で撫で、日干しや水掛など1年以上をかけて水石に仕上げていきます。歴史ある水石には独特の名称や呼び方もあり、凄い愛好家が多いと思います。『石を愛でる,粋な遊び』がこの世界の基本ではないでしょうか。ただの石が人に拾われ、人の手によって何千何万回も磨かれ、重厚な台座に鎮座するその姿は圧巻です。また、それらは名を付けられ人から人へ受け継がれて、時代が乗り更に凄みが増してきます。ここまでの領域に押し上げる、石を愛する人の凄さには執念さえ感じます。最後に、水石として“姿,底,石質”の要素が重要ですが、それらを重んじながらも、自分なりの美意識や個性を生かして、もっと自由に楽しんでは如何でしょうか?



☆注意:偽りのウブ石(削りや割りを行っていない天然のままの状態)があるようです。
また、それとは逆に“許された”凄い加工をする名のある職人さんもいたそうです。


【 菊花石 】

 次に、観賞石の最高峰は菊花石だと思っています。
色や形に数や大きさと渋い艶。大輪の菊もあれば、大空に打ち上がった花火の柳のような繊細な線で様々な色合いもあります。
また、母石自体も質や色など様々で泥岩質から瑪瑙質、最高峰は孔雀石ではないでしょうか。母石~菊紋まで、千通りあると云われる組み合わせが奥の深さを広げます。そのため菊花石ならではの呼び方も様々です。鑑賞石の最高峰として、美の追究-母石の質感,形,色。そしてその母石に合う菊の大きさや種類,数,流れなどの配置や色。究極の菊花石を追求してみては如何でしょうか?基本的には磨き石になりますが、水石に仕上げるには削りはナシです。
【参考画像】

☆注意:工芸品などではなく、尾根石自体に樹脂を埋め込み、プロがよく見ないと見破れないほどの偽物があるそうです。

【桜石,孔雀石】
根尾と言えば桜石や孔雀石。
菊花石を探していると必ず見かけるのがこの2つ。泥など付いていると分かりにくいのですが、川の水で洗えばその魅力に引き込まれます。

【桜石】


【孔雀石】



【パワーストーン】

 霊石/パワーストーンですが、磁鉄鉱や蛇紋岩などのように磁気を帯びたり、磁石につくものもありますので、石は画像や音を記憶すると云われてきました。また古い時代から勾玉や水晶なども霊的な増強や守り石として今も尚、重宝されています。そのような事から石には念を留め、入っている場合があるので、自身を高めてくれる場合と逆に、『拾った石を持ち帰ったら立て続けに事故に遭った』など、悪い念もあり注意が必要です。石の組み合わせや配置でのパワーゾーンも有名ですね。見えるものだけが全てでは無いようです。


【 翡 翠 】

最後に翡翠です。
翡翠は国石であり、日本の代表する宝石です。
翡翠輝石の集合体で他の石と共生して産する事が多く、その比率で翡翠と認められます。色も他の輝石と共存や内容物などの影響で様々です。比率,色,透光,大きさで宝石としての価値が大きく変わります。また、観賞石の世界では、手を入れてはいけない海翡翠、磨きに良い山翡翠などの云われもあります。日本での人気は透明度が高いミント系翡翠ではないでしょうか?

追記:上記『他の石と共生して産する事が多く』その為、翡翠が濃く産出する場所では多くの石に微量ながら翡翠輝石が混入している場合があります。しかし、少し入っているだけで“翡翠です”とはとても言えず、その逆で翡翠輝石は全く入っていないのか?と問われても、“入ってはいるのですが”となるわけで、翡翠としての線引きが難しく、主観や意見の相違からトラブルになる事があります。結論では不特定多数の方が“翡翠ですね”と認めれば翡翠だと思います。なのでザックリですが、確実に分かる翡翠以外、翡翠っぽい石の殆どは“翡翠ではない”が、それが皆が認める美しさがあれば翡翠だと思います。私的には美しい観賞石にプラス、翡翠も入っているかも?の付加価値ぐらいで十分です。たぶん、科学的な比率や比重で翡翠としての基準があると思います。

↑閃石と曹長石が混ざった石に混入した翡翠です。たまたまミント色の翡翠が左下に寄っているので分かりやすいのですが、これが白翡翠や全体に薄く広がっていた場合は気がつかないと思います。そして、この程度の翡翠率では翡翠とは認めてもらえないでしょう。

左側が翡翠表面です。帯状のものが絡まっているような奥深い感じです。
画像右側が接写した翡翠輝石の結晶です。下のラインはメジャーで1mm単位です。原石ですので汚れも写っていますが、0,1mm~モザイク状に0,3mmほどの凄く小さな結晶が、奥の方まで幾重にも折り重なる様子が分かります。

【参考画像】

☆注意:染めた物や外国産の翡翠を糸魚川産と産地偽造したものがあるそうです。


その他の翡翠。
糸魚川といえば軟玉翡翠/ネフライトです。
中国では翡翠と言われていますが、日本では違います。
以前は翡翠と同じ扱いだったようですが、今は翡翠(硬玉)ジェダイト(Jadeite)と、軟玉ネフライト(​Nephrite)に分かれています。
ですが、翡翠と同じく、色,透光,大きさで凄いものがあります。石川~新潟のヒスイ海岸や長野~新潟/糸魚川の姫川周辺に良質なネフライトがあり、とても貴重です。兵庫や岡山でも翡翠は採れますがネフライトは殆ど採れず大変貴重だと思います。
他に、ピンク翡翠と言われていた石も、今では桃簾石となり翡翠とは区別されています。
共に凄く綺麗で、そんな石が豊富にある糸魚川は凄いですね。
【参考画像】


【採集について】

新潟県/小滝川中流の地域指定天然記念物指定区域。
(※管理者の話です。採集禁止区域のここでも割って持ち帰る盗人がいて、困っているそうです。)

※現在、植物,生物など多くの採集規制があり厳しくなっています。
石の分野でも採集禁止の場所はありますが、保護をされながらでも禁止区域以外は開かれた素晴らしい環境です。
地元の方々に迷惑をかけず、ルールを守り節度ある採集を楽しみましょう。
禁止場所等の情報は最寄りの石屋さんなどに聞くと教えてくれると思います。